スタッフからのお知らせ・日記

2015年10月09日 オフィス移転の流れ

1. 現オフィスの面積、契約内容の確認

まず、現オフィスの面積を確認します。 この面積が解らないと新オフィスの面積がどのくらい必要なのか計算することができません。 まず、契約書の面積表示の項目を見て下さい。
契約書の面積(以後、契約面積と呼ぶ)に共用部分(トイレ、給湯部分)が含まれているかどうかがポイントです。
契約書に「賃貸借面積は壁芯計算により算出し、共用部分並びに付属部分を含む」などと記載されていれば一目瞭然です。 あとは、実際の有効面積(トイレ、給湯室等の共用部を含まない実質面積)がどのくらいなのかを寸法図で割り出してください。 大まかですが共用部の負担率は契約面積に対して10%から20%くらいが一般的です。
また、大手デベロッパーなどの大型オフィスは、有効面積を契約面積にしているところが多いですが、契約書に面積についての注釈がないことが多いので注意が必要です。 どうしても解らない場合は、遠慮なく管理会社や家主に確認することです。

2. 解約予告期間の確認

解約予告期間が解らないと、新オフィスに入居する時期を決められません。
予告期間を確認して新旧オフィスの支払い賃料の重複をできる限り少なくすることが肝要です。
契約書の(期間内解約)についての条項を見てチェックします。
一般的に大きく分けると、
•『6ヶ月前』 …… デベロッパーのビルや大型ビルに多い
•『3ヶ月前』 …… 中小のビルに多い
また、予告期間が長いと不利に思われがちですが、新オフィスを選ぶ際に「6ヶ月先の引渡し物件」まで検討対象になってくるので選択肢は大きく広がってきます。
『6ヶ月前』の場合、先に解約予告を提出するテナントも多いようです。
但し、賃貸オフィス市況が借手市場の場合に限られます。リスクがあるので仲介会社に現在の市況を聞き「先に解約予告を提出しても大丈夫か」と確認してから行動してください。
また、解約予告通知書の提出で要注意事項は予告期間の満了日まで現オフィスに入居し続けることができないことです。
なぜなら、「満了日までに原状回復工事を終了させて家主に明渡す」とどの契約書にも定めているからです。
パーテーション等の造作が多い場合には1ヶ月近くの工事期間が必要なケースもあります。
次のオフィスへの引越しは、原状回復工事の前となります。
これらを踏まえて移転時期を決定します。

3. 保証金/敷金の返還時期と金額

最初に償却についてチェックします。
償却とは、「預けている保証金/敷金から退去時に償却費としてその××%分もしくは賃料の××ヶ月分を差し引きますよ。」という契約内容です。 関西地方ではアパート・マンションなどで「敷引き」と称して一般的に使われている契約条件です。礼金の後払いと考えてください。
この償却は、意外な落とし穴で、現オフィスの契約当時は説明を受けて解っていたはずが、退去する頃には「そんな条件知らなかった」というケースが多いようです。
おそらく、家主が発行する「保証金/敷金の預り証」の金額が償却費を差し引いていない保証金/敷金の満額で記載していることが多いのが間違いの原因と思われます。
いずれにしろ、償却費の金額が解っていないと返還される保証金/敷金の金額が正確でなくなります。
契約書の(保証金/敷金)の条項か(保証金/敷金の償却)の条項などに記載がされています。
次は保証金/敷金の返還時期のチェックです。
契約書の(保証金/敷金)の項目か(保証金/敷金の返還)等の項目に記載があるはずです。
多い記載例としては、
•『6ヶ月以内に返還する』
•『3ヶ月以内に返還する』
•『速やかに返還する』
に大別されます。
『6ヶ月以内に返還する』や『3ヶ月以内に返還する』の場合は、「長いな」と思っても、家主に早めの返還をお願いすると応じてもらえることがあります。
『速やかに返還する』と記載されている場合は、家主に確認が必要ですが常識的には1ヶ月以内と考えていいでしょう。
『返還の記載が無い』場合は、早めに家主に確認してください。
そして、保証金/敷金の返還で一番困るケースが家主が保証金/敷金を返還できなくなることです。
まさかと思われるでしょうが、残念なことに実際に起こっていることです。
こうなると、移転計画はストップまたは、大幅に遅れる可能性が高くなります。
その時の対応は、家主の状況にもよりますが、「家主は破綻していないが、手持ちに資金が無くて返還できない」といったケースでは、覚書等の書面を交わした上で保証金/敷金と支払い賃料を相殺してゼロになるまでの期間入居を続けるしか方法がないようです。
しかし、家主が完全に破綻して建物が差押になっている場合には、後述の「オフィスの絞込み」で詳しく説明しますが、保証金/敷金の返還は非常に難しい状況です。
こんなことにならないためにも日頃から家主の状況をチェックする癖をつけるべきです。
現在、一般的に使われている賃貸借契約書のほとんどは保証金/敷金の家主側の保全義務についての取り決めや記載が無く、商慣習化されていません。
要は、テナント自身が大切な資産である保証金/敷金を自衛するしか手段がないのです。
ビルの管理がずさんになってきたり、家主の会社の従業員が減ったなどの変化を見逃さないようにして、 「うちの家主は大丈夫か?」と感じたら、建物や土地の謄本をとって確認することが必要です。
当社では契約時前に、建物の登記簿謄本を取得し、詳細に説明いたします。

4. 原状回復についての取決め

原状回復のチェックポイントは3つあります。
1.契約書に「原状」についての具体的な仕様説明があるか。 2.契約書に原状回復の工事を「家主の指定する業者が施工する」と記載があるかどうか。
3.原状回復工事の期間がどのくらいなのか。
この工事期間がはっきりしないと引越日が決められません。
そして、トラブルになりやすい点が「工事項目、工事内容」と「工事費用」です。
なぜなら、家主とテナントは立場が相反します。家主は、必要以上に原状回復の工事をしたがります。またテナントは一円でも安く押さえ込みたいと考えるからです。
「原状」についての具体的な説明は、契約書に記載が無いのが一般的です。 原状についての仕様書が契約書に添付されていたり、原状を写真撮りしているケースは稀です。原状についての認識はほとんどが紳士協定で成り立っています。
その分トラブルになる要素があるといえます。
通常、原状回復工事についての「工事項目、工事内容」そして「工事費用」の取り決めは、テナントの引越しが終わってから、什器備品等が何もない状態で、家主とテナントそして、施工業者の三者立会いで協議して「工事項目、工事内容」そして「工事費用」の負担を取り決めます。
この立会いがない場合はトラブルになる可能性が出てきます。
立会いについて家主が何も言ってこない時は、お願いしたほうが良いでしょう。
もし、工事の項目や内容に疑問を持つようであれば、餅は餅屋で、移転先の内装工事を依頼する業者に内容をチェックしてもらうと良いでしょう。
内装業者にとってはビジネスチャンスだから、喜んで相談にのってくれるはずです。
また、金額が高すぎて疑問を持つ場合も、その内装業者から「相見積り」を取り、家主側と話し合いを持つべきです。
「家主が指定する業者が施工する」と契約書に記載がある場合も同じです。
指定の業者が施工する場合でも、「相見積り」を取ることにより、家主側から出された見積書と比較できます。
お客様が取った「見積書」が安ければ、その指定業者に対して金額を安くさせる材料になるはずです。
原状回復工事の取り決めについての交渉のコツは、移転先の内装工事を依頼する業者に相談して協力させることです。
また、移転先で特に内装業者に依頼する予定がない場合でも、仲介会社に他の内装業者を紹介してもらうなどの相談をしてみるべきです。

5. ロケーションのチェック

ロケーションは、地図や募集チラシだけで絶対に判断しないことです。
オフィスを内覧するときには、車に頼らずに必ず最寄駅から歩くことです。
不動産業界の徒歩時間表示は80m=1分ですが、実際には信号があったり、歩道橋を渡らなければならなかったりと、誤差が生じます。
また、地下鉄の駅が最寄駅の場合は、徒歩時間表示が改札口からなのか、地上への出入口からなのか曖昧です。
特に大きなターミナル駅だと改札口と地上への出入口とでは時間表示が大きく変わってきます。
そして、歩くことによって周辺環境も確かめられます。
オフィスに適した環境なのか、また、金融機関や郵便局が近くにあるのか、昼食を取るのに飲食店が近くにあるのか等々。 移転してから不便を感ずるよりも事前に環境をチェックしておくことが肝要です。
また、所在によっては、従業員の通勤交通費が現在よりも増える場合も出てきます。
取引先への交通費も行き来の頻度が多ければオフィス選びの大切なポイントとなってきます。

6. トイレ、給湯室のチェック

基本は、女性の立場から見ることです。 トイレや給湯室は日常生活で女性が気にするスペースです。
女性が気にするポイントは、「トイレが男女別になっているか?」ということ。 また、「トイレが室外、もしくは室内から見えにくいところにあるか?」 そして、「女子トイレのスペースが広く、清潔感があるか?」と言ったところです。
給湯室についても、室内にあるのか室外なのかチェックします。
給湯はトイレと違い、室内にあったほうが使い勝手がよくなります。 女性が強い会社の場合は、給湯室と女子トイレが繋がっていたりすると「男女差別だ!」と女性たちからクレームが付くので要注意です。
また、給湯室が室外にあり、ワンフロアに複数のテナントが入居している場合は、給湯室に食器等の物が置けるか等の使い方の制限をチェックする必要があります。

7. 電話回線数と電話番号のチェック

必要な電話回線数が確保できるか確認します。
電話回線とは、電話、FAX、ADSLなどで使っている通信回線のことを指します。
ISDNを使っている場合は、1回線で電話番号2つの計算となります。
一般のオフィスであれば、よほど膨大な回線数でない限り、必要な回線数が引き込めないことはありません。
しかし、マンションタイプのオフィスやワンルームタイプのオフィス、それに築年数の古い中小ビルのオフィスの場合は要注意です。電話回線数が2、3本しか引き込めないケースが意外に多いからです。
マンションタイプの場合は、住居が主体で多くの電話回線を使うことを前提に建物を作っていません。
特に、管理組合のある分譲タイプの区分所有建物の場合は、各室の回線数の割当が管理規約で決まっていることもあり、この場合の増設はまず困難です。
また、古い中小ビルは竣工時の古い通信環境で建築しているので建物全体の電話回線数のキャパシティが少なかったり、電話回線の配管の太さが足りなかったりと、増量が難しいことがあります。
このようにマンションタイプや築年数の古い中小ビルのオフィスに入居する場合は、必要回線数が引き込めるか、必ず仲介会社や管理会社に確認させることです。
次に、電話番号を変えたくない場合も事前に仲介会社に必ず最初に申し付けて下さい。
一般的に行政の区割りとNTTの管轄の区割りが同じものと考えていることが多く、これが落とし穴になります。
例えば、同じ「新橋」の住居表示の中での移転なら電話番号は変わらないだろうと考えますが、実は、こんな小さなエリアでも3つの管轄に分かれ、それも何丁目何番地単位で細かく管轄が分かれています。
NTTの管轄が変わると電話番号も当然変わることになります。

8. 電気容量のチェック

次にオフィスの電気容量(アンペア数)をチェックします。
オフィスの電源(電圧)は大きく2つに分かれ、「電灯」と言われる100Vと「動力」といわれる200Vの2つです。
一般的なオフィスでは200Vの電源が必要な機器はありませんので、100Vの電気容量(アンペア数)のチェックで事が足ります。
100Vの主幹ブレイカー容量を確認し、現オフィスのブレイカー容量と比較して、現在のOA機器の増減に応じて必要容量を算出します。
築浅のビルや管理のしっかりしているビルであれば容量不足の問題はありませんが、やはり築年数の古いビルの場合は、OA機器の業者や管理会社などに確認しておいたほうが無難です。
また、たくさんの電気容量が必要な場合は、最初に仲介会社に依頼条件として伝えてください。
電気容量も電話の回線数と同じで、ビル全体のキャパシティが決まっています。 このキャパシティ以上に増量が必要な場合は、その要望に応えられないことがあります。
また、応えられたとしても大掛かりな幹線工事が必要になったり、キュービクル(トランス)の変更など多額の工事費用がかかります。
そして、もう1つチェックしておいた方が良いのが回路数です。
回路数とは、コンセントなどのブレイカーが何系統に分かれているかということです。
この回路数もコンセント部分のブレイカー数とそのブレイカー1つあたりのアンペア数を新オフィスと現オフィスとで比較確認してください。
特に多くのパソコンなどOA機器がある場合は、細かく回路が分かれていたほうが、ブレイカーが飛んでもリスク分散ができて安全です。 また、消費電力が多いコピー機なども、コンセント回路を専用にするなどの注意が必要です。

9. 床配線と光ファイバーについて

室内のどこに、いくつコンセントと電話線引込口があるかチェックしてください。
具体的には、壁面、柱面、そして床面となります。
コンセントや電話線引込口が壁面や柱面だけだと、室内に島型にデスクを配置した際に、露出でケーブルを引っ張ってくる必要が生じます。 最近では平型のフラットケーブルが普及していますが、それでも断線のリスクがあります。 出来れば床面にコンセントや電話線引込口がある、「床配線」の設備のオフィスをお薦めします。
「床配線」の設備もビルによって様々で、大きく次の4タイプに分かれます。
•電話線引込口だけ床面にある……『1ウエイタイプ』
•電話線引込口とコンセントが床面にある……『2ウエイタイプ』
•電話線引込口とコンセント、それに空配管用の取出し口が床面にある……『3ウエイタイプ』
•すべてがどこからでも引き込める(二重床構造)……『フリーアクセスフロア』(通称 OAフロア)
パソコン台数が少なければ『1ウエイ』や『2ウエイ』でもあまり問題が出ませんが、パソコン台数が多く、LANを組んでいる場合などは、『3ウエイ』か『フリーアクセスフロア』をお薦めします。
『3ウエイ』であれば空配管を使ってLANケーブルを通すことができます。また、『フリーアクセスフロア』はレイアウトに関係なく、どこでもケーブルを立ち上げることができます。
そして、注意したいのが『フリーアクセスフロア』の場合には、概して床面にコンセントや電話線引込口が付いていないことが多い。
これは、テナントのレイアウトに応じて一番適切なところにそれらを付けられるようにとの配慮からです。
しかし、その取付け工事にかかるコストは当然にテナント負担です。『フリーアクセスフロア』に気を取られて見逃しやすい点です。
次に光ファイバーケーブル(以下、「光」という)について、「光」の引き込みがオフィス選びの必須条件であれば、最初に仲介会社に申し出てください。
大型ビルであればほとんどがMDF(電話端子盤の大もと)まで引き込んでありますが、中小のビルはそこまでインフラ整備が進んでいません。実態としてはビルの三割近くがMDFまでの引き込みがありません。
また、「光」の引き込みが無いビルに、新たに「光」を引き込む場合には、供給会社(NTT等)の混み具合によりますが1ヶ月前後の時間が必要となります。

10. 空調のチェック

まず、空調機の使用時間の制限があるかチェックしてください。
特にビル全体で集中して空調機を動かしている(セントラル方式)場合は、「空調の使用時間は朝××時から夜××時まで、土曜日曜は運休」などの限られた時間に運転する体制になっています。
築年数の古い大型のビルに、まだまだ多い空調体制です。
このセントラル方式の空調でも、空調時間の延長ができるビルがあります。しかし、その延長料金が恐ろしく高い。なぜなら、必要の無いスペースまで空調が効いてしまうからです。
一定の時間で就業時間が終了するテナントであれば良いですが、残業が日常茶飯事のテナントは要注意です。
そして、次に空調機がいくつ、どこに付いているか確認してください。
個別の空調機を設置しているオフィスであれば、10坪から15坪のスペースに一機はほしいところです。
個別の天井埋込型が多く設置されているオフィスは、パーテーションで天井まで間仕切る場合に一番適した空調といえます。
この空調設備であれば法律事務所のように多くの個室を完全間仕切りで比較的簡単に作ることができます。
また、階ごとの空調システムで天井まで完全間仕切りをする場合は、空気を循環させる必要があるので空調の吹き出し口と吸い込み口がつくる必要があります。吹き出し口はあるが吸い込み口がない部屋を作ると、空気が循環せずに汚れた空気の逃げ道が無くなり、どうにもならなくなります。
最近は、「システム天井」と言われる、照明の配列の中に空調の吹き出し口と吸い込み口が組み込んである空調システムが大型ビルを中心に普及してきました。
照明と空調機が一体なので間仕切りのレイアウトがしやすいように思えますが、内装業者に言わせると間仕切壁の取り付けが難しく、その分コストも高くなり細かい間仕切りを希望するテナントにはあまり向かないようです。

11. 家主の財政状態

体力の弱った家主のビルに入居すると、テナントまで弱ったことになるので気を付けてください。
特に平成16年4月の民法と民事執行法改正により、入居したビルが競売に係った場合、その競落人はテナントの敷金・保証金等の預託金の返還債務を引き継がなくて良いことになりました。
つまり、競売にかかった前所有者にしか返還請求出来ず、返還されることが極めて困難になってしまったからです。
この法改正による変更点を仲介会社が重要事項説明書で説明するよう行政から指導がありました。
しかし、現状の賃貸借契約書では、テナントが預入れた保証金/敷金について、家主側の保全義務についての取決めや記載がありません。要するにテナントが自衛していくしか方法がありません。
そして、その方法とは破綻の可能性がある家主のビルに入居しないこと、要はそういう家主とは付き合わないことです。
まず、仲介会社に検討しているビルの家主について悪い噂などがないか聞いてみることです。
家主が個人ではなく法人であれば、仲介会社にデータバンクや商工リサーチなどの調査機関を使って企業概要を取らせることです。資料が取れれば大まかな財政状態は把握できます。
そして、必ず建物または土地の全部事項証明書(登記簿謄本)を仲介会社に取らせてチェックすることです。
謄本のなかの「所有権に関する事項」(甲区)欄を見れば差押や仮差押になっているかがすぐに判ります。また、「所有権以外の権利関係」(乙区)欄を見ればそのビルや土地を担保に入れていくら借金しているかが判ります。ビルや土地の価値に比べて抵当権や根抵当権の設定額が余りに大きければ要注意です。
あとは、抵当権や根抵当権の設定が「共同担保」になっている場合は複数の不動産を担保に借金をしていると言うこと。「共同担保目録」を見れば担保に入っている不動産が把握できます。
それから、抵当権、根抵当権の設定権者が名前も聞いたことのない会社であれば、既にまともな金融機関から見捨てられていると考えて下さい。こういうビルには絶対に入居してはいけません。
最近は仲介会社の質が落ちて、家主の財政状態についての説明をしない悪質業者がいます。
せっかく移転した先が破綻した家主のビルでは何もなりません。移転しないほうがましです。
もし、お客様が依頼している仲介会社が、これから契約しようとするビルの全部事項証明書(登記簿謄本)も提出しないようであれば依頼しないほうが良いと思います。仲介会社として最低限の義務です。

12. 支払いコストの比較

候補物件がいくつか決まれば、当然賃料等の支払いコストでの比較が必要となります。
比較の仕方は、それぞれのオフィスの面積が同一でないので、総額ではなく単価での比較となります。
この賃料単価も単純に『月額総額÷面積』だけで算出して比較すると正確でなくなります。
正確でなくなる問題点は、〔移転理由と依頼条件〕で説明しましたが、契約面積の算出がビルによってまちまちだからです。全てのビルが『有効面積=契約面積』であれば簡単ですが、共用部を付加した契約面積表示のビルが多く、当然 契約面積で単価を算出すると誤差が生じます。
また、ビルによっては更新料や償却、中には礼金の設定があったりします。これらもコスト比較の材料にするべきです。
そして、共益費・管理費です。ビルによって単価がそれぞれ違います。中には第二賃料ではないかと思えるほど管理内容の割に高額なビルもあります。この費用もテナントが毎月負担するのでコスト比較の材料に加える必要があります。

13. 入居の申込み

申込みとは、お客様がオフィスを借りる意思があることを申込書にして家主側に知らせる意思表示です。
そして、家主側は申込書を受け取ることによりお客様が借りる意思があることを認識します。
その際、会社案内や会社概要を添付する必要があります。 用意がなければワープロで打ったもので構わないので作成しておきます。 どうしても作成できないようであれば履歴事項証明書(会社謄本)のコピーを申込書に添付してください。
面倒と思いがちですが、家主はお客様との取引は初めてです。
入居の審査をするうえで欠かせない材料だからです。
申込書の記載内容は、賃貸条件は勿論のこと、物件の引渡日、また連帯保証人には誰がなるのか等々、細かい部分の記載が必要です。
申込書の書き方ひとつで、どのくらい煮詰めた移転なのか? それこそお客様がどういう会社なのか推し量ることができます。
私ども仲介会社が家主の代わりに入居審査する場合でも、申込書の書き方ひとつでその会社のイメージが浮かびます。 それだけ申込書は重要なものと認識していただいて、できる限り空欄のないように必要な事項は埋めてください。
家主側も商慣習として守秘義務を守りますので、信用してなるべく詳しく記入してください。

14. 価格交渉の仕方

借手市場のビルの場合は申込書を使って価格交渉することが多い。
交渉の仕方は、申込書にある賃料や保証金/敷金等の賃貸条件欄にお客様が希望する条件を指値記入して「この条件なら借りますよ」という交渉書面にします。
その申込書に会社案内や会社概要を添えて家主側に提出して交渉を始めます。
勘違いしないでいただきたいのは、指値をすれば家主側は全てOKと言うわけではありません。
あくまでも承諾の意思は家主にあります。
また、指値があまりにも厳しすぎたり、相場を逸脱していたりすると、交渉に入る以前に家主が断ってきます。
こういう断られ方をすると、再交渉のテーブルに家主が着くことはとても難しくなります。
「価格交渉はしたいが家主に断られて話が進まなくなるのは、もっと困る」と言う事であれば、交渉価格を仲介会社にアドバイスしてもらってください。 交渉事は一方的に条件を押し付けても成り立ちません。お客様も譲歩できる部分を持って紳士的に応対してください。
フリーレントという言葉を知っていますか。
あまり耳慣れない言葉だと思いますが、フリーレントとは契約期間内にテナントの賃料支払いの免除期間を一定期間設けることを言います。平たく言うと「タダで一定期間オフィスを貸すこと」です。
賃貸のオフィス不況が長く続いた米国で使われ始め、日本ではバブル経済崩壊直後、賃貸オフィス需要が大きく落ち込んだ時に、使われ始めたテナント獲得の切り札的手法です。
貸手市場が強い最近では積極的に導入する必要がなくなりましたが、お客様が交渉を希望するのであれば仲介会社のアドバイスを聞いたうえで申込書に希望条件として書き加えて提出したら良いでしょう。
特に入居を希望するオフィスが「現空」の状態で、現入居中のオフィスにまだ解約予告を提出していない場合などは、支払い賃料が重複しないように申込みをするオフィスの家主側に交渉することがあります。
この交渉事の可否もあくまでも家主が決めることなので、交渉すれば全てOKと言うわけではありません。仲介会社のアドバイスを聞いて節度を持って交渉してください。

15. その他の報告事項

申込みをするオフィスに申込人であるお客様以外の会社や団体が名称掲出をしたり、電話を引き込んだりする、いわゆる同居会社があれば申込時に同居の承諾のお願いを家主にしなければなりません。
賃貸借契約書では通常、同居や転貸は禁止事項となっています。
家主に無断でこれらを行うと契約を解除させられることもあります。
順序としては、申込時に家主の承諾を取り、賃貸借契約締結時に同居会社の同居願いをその商業登記簿謄本と印鑑証明書を添付して提出し家主の承諾をもらいます。 同居願いとは「同居会社は賃借権を主張できない。また賃借人が退去すれば賃借人の責任において同居人を退去させる」という内容です。この同居願いを提出しないと当然ですが家主の承諾は絶対に得られません。
また、同居人が賃借人と資本関係や役員の重複がない場合などは、第三者と見られて断られる可能性が高くなります。

16. 賃貸借契約書のチェック

17. 重要事項の説明

宅地建物取引業法では、賃貸借契約締結前に仲介会社は専任の宅地建物取引主任者に賃借人に対して重要事項説明を行わなければならないと規定しています。
重要事項説明とは文字通り賃貸借契約の重要な部分の説明を言います。 契約内容に疑問や質問があればこの説明の場を使って、主任者に求めてください。 また、説明を行う主任者は主任者証を必ず提示しなければなりません。
「契約書は事前に目を通したから重要事項説明はいいや!」などと面倒がらずに必ず説明を受けるようにしましょう。契約内容の重要な部分なので何度説明を聞いても損はありません。

18. 定期借家契約

最近は、通常の賃貸借契約以外に定期借家契約による事業用賃貸物件の契約が増えてきています。
耳慣れない方もまだまだ多いと思うので少し説明します。
定期借家契約とは、正確には借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約のことを言い、平成12年3月1日に借地借家法が改正され施行された、まだ新しい契約形態です。
通常の賃貸借契約と違うところは「契約期間が満了すると更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する。」 もっと簡単に説明しますと更新ができない契約内容であることです。
しかし、家主とテナントが契約終了後に新たな契約を締結する意向がある場合は再契約することができます。
本来は、賃貸住宅の供給を増やす目的で、定期借家契約が一般的な欧米に習って一定期間だけの賃貸を可能にするために作った法律です。
しかし、最近では事業用賃貸でもこの定期借家契約を導入する家主が増えています。
特に不動産ファンドに組み入れたビルなどは、期間収益を確定させたいのでこの定期借家契約を導入するケースが多くなりました。
なぜ期間収益が確定するのかと言うと、契約期間内において賃料等の改定を行わないとする内容が記されているので、テナントからの解約が無ければその期間の収益が確定します。中には期間内解約について認めない内容で契約をすることもあり、ファンドの利回り計算が立てやすくなります。
通常、テナントの期間内解約は一定の予告期間を経れば可能であり、契約期間についてはオフィスが2年から5年程度、店舗は5年から10年程度が一般的です。
そして、将来的に建替え等の計画や都市計画道路上にビルがあり、その取り壊しの計画がある場合もこの定期借家契約を使うケースが多いです。
この契約形態であれば契約期間が終了すれば、再契約をしない限りはテナントは退去しなければならず、テナントが立退きでゴネることなく建替え等の計画を実行しやすくなります。
定期借家契約の場合は、契約締結前に家主が「定期建物賃貸事前説明書」の説明をテナントに対して行うことを義務付けています。
説明の内容は、「この契約は契約期間が確定していて、更新されない契約であり、期間満了によって終了する」と言うことです。

19. 移転スケジュール

オフィスの契約が締結したら、移転スケジュールを立てる必要があります。
まず、最初にイメージしたオフィスレイアウトを、具体的なレイアウトにすることから始めます。
しかし、このレイアウトの決定が一番難しい。 そして、レイアウトが確定しないと什器備品の購入や既存の什器備品の転用の有無が決まりません。 ある程度の面積のオフィスであれば、レイアウトを内装業者に頼んだほうが早くて確実です。
近頃はオフィスレイアウトを無料で行ってくれる業者が多いので活用すべきです。
また、内装施工や什器備品の取扱いは勿論、電話の引込工事や電源の工事、そして引越しの手配まで移転作業のフルセットで対応する業者もあります。
移転作業は手配師のような仕事で各作業での業者の選択から始まり、その手配、そして作業のチェックと、すごく手間がかかります。
この煩わしさを一業者が全て行ってくれれば、こんなに楽なことはありません。移転作業の一環で万が一トラブルが生じることがあれば当然に請け負ったその業者が責任を負います。
移転の担当者であるあお客様が本業に忙しいのであれば活用度は大です。
無理のない移転スケジュールを組む上でも、候補オフィスに入居申込書を提出する頃には内装業者に依頼してレイアウトプランをアドバイスしてもらったほうが良でしょう。

20.法務局への届出・手続き

移転前の担当部署で手続きを行ってください。移転のケースや移転先によって転出書類が異なるケースがあるので注意が必要です。
手続きは約1週間前後で終了します。特に本社移転の場合は「類似商号」や「定款の変更」も必要になります。
※「類似商号」については事前に確認してください。
税務署への届出
移転手続きを済ませてから「登記簿謄本あるいは抄本」を添えて「納税地移転」の届出書を新・旧税務署へ遅滞なく提出します。その他「給与支払い事務移転の届出(新・旧1ヶ月以内)」などが必要です。
都道府県税事務所
所在地と転出先の都道府県税事務所(東京都23区内は転出先のみで可)に、登記簿謄本を添付して事業開始申告書などを提出します。
電話の移転手続き
契約者名と移転先の住所が確認できる書類(登記簿謄本あるいは抄本)などを用意し、現在地と転出先の各電話局で手続きをします。電話の移転手続きは工事予定日の1ヶ月前までに受け付けしましょう。取り外しは移転終了後が良いでしょう。3〜4月は転居シーズンとなるため混雑が予想されます。この時期は早めに申し込んでおきましょう。



































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・掲載物件の中には、既に先行商談があるものも含まれており、お問合せ時に成約している可能性がございます。
・表示価格に、消費税が含まれておりません。実際の課税項目について、別途消費税が掛かります。
・表示している価格や図面に対し、現況と相違がある場合、現況を優先と致します。
・各物件の賃料、坪単価、敷金や最新のテナント募集状況につきましては、お気軽にお問い合わせください。


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